takesumisunのブログ

あんさんぶるガールズのSS書いたりしてます

【あんガル】黒森すずとの夏休み~1日目⑤~

時刻は十時過ぎ,いつもなら風炉に入る時間だ.

 こういった場合は,お客さんを先に入れるものだと教わっている.

 しかし,すず姉はリビングに戻ってきていない.

 もしかしたら部屋で勉強しているのかもしれないから,邪魔しないようにおとなしくしていたが.

「もう一時間は経つよな」

 お茶の差し入れも兼ねて,少し様子を見に行くかな.

 冷えた麦茶とお菓子を持って階段を上っていく.

 コンコン

 ・・・・返事がない.音楽を聴きながらやっているのかな?

俺はゆっくりと扉を開けた.

「すず姉.お茶持ってきたよ」 

 扉を開けた気配で気づいたのか,ヘッドフォンを外し,こちらを見ていた.

「お茶持ってきたけど,飲む?」

「あ,あぁお茶か,ありがとう頂くよ」

「それと,お風呂なんだけど」

「ふ,風炉!?」

「う,うん.いつもは何時に入っているのかなって」

「い,いつも!?」

「あ,いや.そろそろ沸かしたいかなーってだけで深い理由はないんだ」

「そ,そうか.僕は何時でもかまわないぞ」

「そう?じゃあ沸かすから,キリが良くなったら入ってね」

「は,入る!!?」

「?一応お客さんだし,先に入ってもらうのが礼儀かなって」

「あ,あぁ.そういうことか.別に気にしなくてもいいんだが」

「気にしないと俺が姉さんに怒られちゃうんだよね」

「そうか.アンジーはそういう所はしっかりしているからな」

「そゆこと」

「なら先に入らせてもらおうかな」

「だいたい十五分かかるから,それ以降なら何時でもいいよ」

 俺は,お茶とお菓子を置いて,部屋から出た.

 なんか慌てている気もしたが,そりゃ他人の家のお風呂は緊張するものだよな.ましてや,俺しかいないわけで.

 ・・・・は!

 そうだよ俺しかいないんだよ.今更ながら事の大きさを理解した.

 いけない!雑念を振り払うんだ!こんなんじゃ七日間ももたないぞ!

 ・・・そうだよ七日間もあるんだよ!

 あああああ!ダメだ!どんどんと雑念が増えていく.

 先まで考えないようにしてたのに,ちょっと意識したとたん,これじゃあ体がもたない.

 とにかく気を静めないと.何かいい方法は・・・そうだ!課題を進めよう!

 問題を解いていれば,余計なことを考えている余裕はなくなる!

 そうとなれば,やはり数学が適切だ.

 俺はものすごい勢いで次々と進めていった.

 

 

 

 あれから小一時間すず姉は入浴している.

 うっかり鉢合わせないように,部屋の中でずっと音楽をかけながら集中していたから随分と進んでしまった.

 しかし長風呂だ.いや,女子はこれが普通なのか?比較する対照が少ないからわからない.

 一区切りつき,集中力も切れてきたから休憩しようと思うのだが.こういった油断したところに敵はやってくる.今下に降りようものならそれこそタオル姿のすず姉と鉢合わせて.

「きゃー!弟くんのえっちー!!(パンチ)」

ひでぶ~!」

 なーんてことになりかねない.それを回避するためにずっと部屋で待機して・・・

「ん?タオル」

 あれ・・・俺,どのタオル使っていいか教えたか?そもそもお客さん用のタオル出したっけ?

「もしかして,タオルが無いから出られないんじゃ!?」

 ダッダッダッダ!慌てて階段を下る.

 この暑い時期だ,長風呂で熱中症になってもおかしくない.もしそんなことになったら一大事だ!

 俺は勢いよく洗面所の扉を開けた.

「すず姉!大丈夫!?・・・・・・っ!」

「えっ・・・・・・」

 そこには今まさに風炉から出たてのすず姉(タオル姿)が,いた.

 すず姉は何が起きたのかわからない表情をしていたが,徐々に顔が赤くなり涙目になっていき.

「え,あ,そ,そのごめ」

「きゃあああああ!!」

 すず姉のきれいな右ストレートが顔面にクリティカルヒットした.

 俺は見惚れてしまって,避けれもしなかったし,ひでぶ~とも言わずその場で鼻血を出しながら気絶してしまった.